研究概要 |
糖尿病は,歯周病のリスク因子として重要視されている。また,重度歯周炎の糖尿病患者は,歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすことが明らかになりつつある。糖尿病と歯周病の相互関係を明らかにするために,2型糖尿病患者について内科学的,歯周病学的に検討を行った。 材料と方法 明海大学歯学部付属明海大学病院の内科を受診している2型糖尿病患者(DM群)46名(男性32名,女性14名平均60.7歳)を対象とした。糖尿病の検査として,ヘモグロビンA1c(HbA1c),空腹時血糖値(FBS),空腹時インスリン濃度(IRI),インスリン抵抗性(HOMA-R),Body Mass Index(BMI)等を行い,罹患年数,合併症,糖尿病治療の種類についても調査した。歯周病学的パラメーターとしては,現存歯数,プロービングポケット深さ(PPD),プロービング時の出血(BOP),歯槽骨吸収度を診査した。血清中の腫瘍壊死因子(TNF-α)濃度も測定した。 結果 DM群の歯周病学的パラメーターの平均は,現存歯数が19.9歯、平均PPDが3.9mm、4mm以上のPPDを有する歯の割合が52.6%、BOPが53.8%,歯槽骨吸収率が30.3%であった。これらの結果を平成11年歯科疾患実態調査と比較すると,DM群はどの年代においても残存歯数はほぼ同数であったが,6mm以上の歯周ポケットを有する者の割合が高かった。DM群のHbA1cの平均は7.32%であり,比較的血糖コントロールは良好であった。各種臨床パラメーターとの相関関係は,糖尿病の罹患年数と,平均PPD,4mm以上のPPDを有する歯の割合,BOP(%),および骨吸収度との間,そして,血清TNF-α濃度とHOMA-Rとの間に有意な相関関係が認められた。また,インスリン治療を受けている患者は,受けていない患者と比較して,BOP(%)が有意に高かった。 考察 本研究の対象となったDM患者は,内科的治療により血糖が比較的コントロールされていたが,日本国民の平均よりも歯周炎が進行しており,その傾向は糖尿病の罹患年数が長く,インスリン治療を受けている者ほど顕著であることが示唆された。また,歯周治療は,TNF-αの産生を抑制することにより,糖尿病の血糖コントロールを改善させる可能性があると考えられた。
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