研究概要 |
著者は最近,不活性オレフィンの触媒的活性化法として,触媒的環化アルケニル化反応の開発に成功している。本法を利用すれば,同一分子内に存在する二つの不活性オレフィンをカップリングさせ,多様な環状化合物を一挙に合成できることが明らかになってきた。本研究では,触媒的環化アルケニル化反応のアフィディコリン合成への適用と,ビシクロ[3.3.0]オクタン化合物やビシクロ[4.3.0]ノナン化合物の簡易合成法への展開を検討した。 (1)アフィディコリンの全合成 触媒的環化アルケニル化反応を利用することにより,アフィディコリンのCD環部に相当するビシクロ[3.2.1]オクタンを一挙に合成後,この構造上の特徴を利用した立体選択的な官能基変換反応を組み合わせて抗腫瘍活性を持つアフィディコリンの全合成を達成した。 (2)ビシクロ[3.3.0]オクタン骨格とビシクロ[4.3.0]ノナン骨格のワンポット合成 触媒的環化アルケニル化反応のさらなる展開として,生理活性天然物の部分構造であるビシクロ[3.3.0]オクタン骨格とビシクロ[4.3.0]ノナン骨格の新しい合成法の開発に着手した。その結果,ビシクロ[3.3.0]オクタン化合物は,45〜65%の収率で得られることが分かった。また,ビシクロ[4.3.0]ノナン化合物は,シクロペンテン誘導体から45〜55%の収率で合成することが出来た。さらに興味深いことに,触媒的環化アルケニル化反応がシリルエノラートと芳香環とのカップリングに適用できることも明かとなった。
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