研究概要 |
ビタミンD受容体とリガンドの相互作用を新しい方法論(この方法を2次元アラニンスキャニング変異解析と名づけた)で検討した.すなわちポケットを構成している全アミノ酸残基(33個)を順番にアラニンに変異させた1点変異体を作製し,それらの標的遺伝子転写活性化能を,マウスオステオポンチンのビタミンD応答配列をプロモーターとするルシフェラーゼレポーター遺伝子と12種のリガンドを用いて網羅的に解析した.リガンドには天然のホルモンである1,25-ジヒドロキシビタミンD3,私達の合成した最強のビタミンD受容体結合活性を持つ20-エピ-22R-メチル-1,25-ジヒドロキシビタミンD3並びに作用分離を示すなどの特徴的な作用を持つ種々のアナログ(22-オキサ-1,25-ジヒドロキシビタミンD3,20-エピ-1,25-ジヒドロキシビタミンD3,20-エピ-22-オキサ-24,26,27-トリホモ-1,25-ジヒドロキシビタミンD3)を用いた.その結果を縦軸に変異VDR,横軸にリガンドを配した2次元パッチテーブルに要約した.この2次元テーブルから,1)ビタミンD骨格を持つリガシドは、類似した転写活性パターンを示す.2)D骨格リガンドには、共通の10個のアミノ酸残基(Y143,D144,L233,I271,R274,W286,Y295,H397,Y401,F422)が必須である.3)類似構造のリガンド群ごとに特徴的パターンを識別できる.4)活性の低いリガンドでは必須なアミノ酸残基の数が増える.5)ビタミンDスーパーアゴニスト類ではwild typeより活性増強を示す変異体が増える.6)LCAのようなビタミンD骨格を持たないリガンドは全く異なるパターンを示すことが明らかとなった.今後,上述の結果に基づいた分子間相互作用の化学的解析を行い,作用分離との関係を明らかにしたいと考えている.
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