研究概要 |
抗腫瘍活性アノナセオウスアセトゲニン類の系統的不斉合成法の開発が高活性化合物の探索,構造決定,作用機作の解明などに役立つものと考え,多様な立体異性体の合成に適用可能な反復合成法に基づいた系統的合成法を立案し,その確立を目指して検討を行った結果,以下に示す成果を得た. 1)α-オキシナルデヒドに対するC_4ユニットの立体選択的導入の検討 高収率・高選択性を実現しうるC_4ユニットの構造を検討した結果,ベンジリデンアセタール基で保護された3-ブチン-1,2-ジオールが最適なC_4ユニットであることが分かり,配位子の不斉を変えることでα-オキシアルデヒドの不斉アルキニル化を完全に立体制御し,2種類のジアステレオ異性体をいずれも高収率・高立体選択性に作り分けることが可能となった. 2)THF環セグメントの立体分岐型構築法の確立 上記のジアステレオ異性体を,THF環の構築手順を変えることによって,THF環体の4種類のジアステレオ異性体を立体分岐型に,すべて作り分けることが可能となった. 3)反復合成法によるポリTHF環構造の高立体選択的構築法の開発 アセトゲニン類の連続THF環構造の高立体選択的構築法を確立すべく,mono-THF環化合物に対するC_4ユニットの導入を検討し,8種類の立体化学を持つbis-THF環セグメントを,それぞれ高度に立体を制御して合成することに成功し,ポリTHF環合成法の基礎を確立することができた. 4)γ-ラクトシ環セグメントの導入によるアセトゲニン類への誘導 我々の方法論が実際にアセトゲニン類の合成法に活用可能かどうかを検証するため,ヒトの肺がん,腎臓がん,大腸腺がん細胞に対して強力な細胞毒性を持つmurisolinの不斉合成を検討した.その結果,ジイン体の不斉アルキニル化を鍵反応として高度に立体を制御して,その不斉全合成に成功した.これによりTHF環セグメントをアセトゲニン類へ導くための基本的な方法論を確立することができた.
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