研究概要 |
癌,ウイルス性疾患および遺伝子疾患の治療薬として期待できる遺伝子発現制御物質に着目し,現在までに報告のないポリアミドとヌクレオシドの両方の特性を備えたポリアミド-ヌクレオシド縮合体を考案し,合成の検討,DNAとの相互作用に関する研究を行い以下の研究実績を得た. 1.遺伝子発現制御物質としてのポリアミトヌクレオシド縮合体の設計と合成:ピロールポリアミド-アデノシン縮合体(Apy),3-アミノプロピオニルリンカーを介したグアノシンとピロールポリアミド縮合体(GBP),および3-アミノプロピルリンカーを介したグアノシンとピロールポリアミド縮合体(GAP)を考案し合成を達成した.2.ピロールポリアミド-ヌクレオシド縮合体とDNAとの相互作用の検討:塩基配列の異なる3種のDNA二重鎖と合成したApy,GBPおよびGAPとの相互作用をTm値およびCDを用いて検討した結果.Apy,GBPおよびGAPは配列認識能を持っていることが明らかとなった.特にGAPは高い選択性を持ち,対照物質のDistamycin AおよびApyおよびGBPより優れた配列認識能を有することを見いだした.これら合成物は遺伝子発現制御効果を期待できることから,さらなる新規抗ウイルス薬,抗がん剤,遺伝子疾患治療薬として今後の発展に期待が抱けるものと思われる.3.高立体選択的あるいは特定部位を標識した安定同位体標識化ヌクレオシドの効率的合成法の開発:{D-(5R)-[5-^2H_1;5-^<13>c]リボシル}チミンの合成を達成した.この標識化リボヌクレオシド誘導体を構成単位としたオリゴマーを合成すれば,医薬品等との相互作用時のNMR測定により詳細な構造解析が可能となると期待できる.
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