研究概要 |
本研究は,高等植物由来のステロイド配糖体やフェノール性物質のうち,アポトーシス回避機構を獲得した腫瘍細胞に対して,アポトーシス誘導の標的分子に作用してアポトーシスを誘導する化合物を探索し,アポトーシス誘導分子標的薬剤のシードを見出すことを目的として実施したものである.研究を実施した植物検体は,ユリ科Bulbinella floribunda,リュウゼツラン科Agave utahensis,タシロイモ科Tacca chantrieri,キンポウゲ科Helleborus orientalis, Helleborus niger,キンバイザサ科Curculigo orchioides,キク科ニトベギクTithonia diversifoliaである.これらの活性成分の探索の結果,細胞毒性・抗腫瘍活性物質として,B.floribundaからは新規フェニルアントラキノン類,A.utahensisからは新規ステロイド配糖体,H.orientalisからは強心配糖体,H.nigerからはフィトエクダイソン,C.orchioidesからはシクロアルタン型の新規トリテルペンならびにその配糖体,ニトベギクからはフラボノイド類とセスキテルペン類が単離され,スペクトル解析と化学変換により構造を明らかにした.それぞれにおいて多くの類縁物質が単離されたので,構造活性相関について考察するとともに,強い活性を示した新規物質については培養がん細胞を用いたパネルスクリーニングを実施した.その結果,H.nigerからから単離されたフィトエクダイソン,C.orchioidesから単離されたシクロアルタン型の新規トリテルペン,ニトベギクから単離されたセスキテルペンにdifferential cytotoxicityが確認された.また,A.utahensisから単離されたステロイド配糖体のうち,5β型のスピロスタノール配糖体がアポトーシスを誘導することを見い出した.
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