研究概要 |
シストチアゾール類は、酵母や糸状菌などの真菌類に対して特異的な生育阻害活性を示す物質として、粘液細菌の一種Cytobacter fuscu培養液のアセトン抽出物から単離された化合物であり、その作用機構はミトコンドリアNADH酸化酵素阻害による呼吸阻害である。また人由来の細胞に対して強い細胞毒性を示す。シストチアゾール類の構造上の大きな特徴は、ビチアゾール構造とポリケチド構造を併せ持つことであり、またβ-メトキシアクリレート構造は活性発現に必須の構造である。しかしながらこれらの絶対構造は、シストチアゾールAおよびCについてのみ明らかにされているが、その他のシストチアゾ-ルF,G,H,IについてはNMRスペクトルから推定されているに過ぎない。また類似の構造を有する抗真菌性化合物メリチアゾール類が異なる菌より単離されているが、メリチアゾールBおよびEを除いてその絶対構造は明らかになっていない。そこで申請者らは、これらの構造を明らかにすると共に、天然からは極微量しか得られないこれらの化合物を合成により供給することを目的とし、シストチアゾール類およびメリチアゾール類の一般性の高い独自の合成ルートを確立した。すなわち平成14年度では、左半分に相当するアルデヒド部をリパーゼを用いる酵素的手法とパラジウム触媒を用いる一酸化炭素・メタノール系での環化・カルポニル化反応を鍵段階として合成した。次いでビチアゾール構造を持ったホスホニウム塩類を合成し、アルデヒド部とのWittig反応により目的とするシストチアゾールAを合成した。同様の手法を用いて平成15年度では、シストチアゾールB,F,G,H,IおよびメリチアゾールF,Iの全合成を達成した。このことからこれらの天然物は、すべて(4R,5S,(6S)構造を有することが明らかとなり、又この構造が活性発現に必須であることが明らかとなった。
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