研究概要 |
微小管安定化効果を有するdiscodermolideおよびlaulimalideの合成研究を行い、両天然部の形式合成を達成した。 (R)-リンゴ酸から立体選択的に合成された光学活性(2S,3S,4R)-4-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-2-メトキシカルボニル-3-メチルシクロペンタノンの2位メトキシカルボニル基を還元、保護した後、Baeyer-Villiger反応させると対応する三置換δ-ラクトン、(4R,5R,6S)-4-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-6-tert-ブチルジメチルシリルオキシメチル-5-メチルテトラヒドロピラン-2-オンがほぼ定量的に得られた。テトラヒドロピラン環の3-位に立体選択的にメチル基を導入後、6-位側鎖の延長、立体選択的ヒドロキシ基の導入により抗腫瘍活性をもつ微小管安定化剤discodermolideのC1-C8フラグメント、(2S)-2-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-3-[(2S,3S,4S,5R)-4-tert-ブチルジメチルシリルオキシ-3,5-ジメチル-6-オキソテトラヒドロピラン-2-イル]プロパナールを合成することができた。このものはSmithらが報告した全合成の中間体と一致し、discodermolideの形式合成を達成した。 一方、3-p-メトキシベンジルオキシプロパナールおよび1,1-ジブロモ-3-tert-ブチルジフェニルシリルオキシ-1-プロペンを出発原料とし、それぞれC17-C22およびC23-C27に相当するケトホスホン酸エステルおよびアルデヒドへと導いた。両セグメントをカップリングさせたのち、WenderらのC15-C27中間体へと導いた。一方、市販の(S)-1-ヒドロキシ-2-メチルプロパン酸メチルを出発原料として、立体選択的に(5S,7R)-5-アリルオキシ-1-ジアゾ-8-(p-メトキシベンジル)オキシ-7-メチルオクタン-2-オンへと変換した。2価の銅触媒との反応により所望の2,6-トランス-二置換-3-テトラヒドロピラノンが高収率、高立体選択的に得られた。得られた環化体を、MulzurらのC3-C12中間体へ変換した。以上のようにlaulimalideの形成合成を達成した。
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