配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
配位子の立体および電子的な性質の違いにより,金属錯体の反応性は劇的に変化する.これまでに幾つかの配位子効果が発見・提唱されてきたが,これらの中でも『シス効果』と呼ばれるハードなルイス塩基に特徴的な配位子効果は,金属錯体の反応性に与える影響が小さいと考えられ、これまで見過ごされていたものの一つである.申請者は,この『シス効果』に着目し,この適用によって遷移金属錯体が触媒する有機合成反応の効率化と新規キラル錯体の創製に成功した.具体的には,有機コバルト錯体を中心に,種々のハードなルイス塩基を配位させ錯体の反応性の変化を詳細に検討した結果,分子内にアミノ基を有する[η^2,μ^2-1-(2-aminophenyl)-2-phenylethyne]hexacarbonyldicobaltが,Pauson-Khand反応と呼ばれる一酸化炭素の挿入を伴ったアルキンとアルケンの共環化反応において非常に高い触媒回転率を示すことを明らかにした.また,空気酸化に対して安定であり,アルキンやアルケンを基質とした反応において全く触媒作用を示さないbenzylidynetricobalt nonacarbonylが,ヒドリド配位子の『シス効果』を適用することによって効率的な触媒として機能することを見出した.さらに,diarylalkyneとoctacarbonyldicobaltから錯体を形成する際に,触媒量のキラルな2,3-0-cyclohexylidene-1,1,4,4-tetraphenylthreitolを共存させると,最高90%e.e.の光学純度で軸不斉を持った[η^2,μ^2-1,2-diaryl-ethyne]hexacarbonyldicobaltを生成することも見出した.ハードなルイス塩基を反応系内に共存させるという簡便な操作によって,『シス効果』が発現し,高効率的な反応を実現できたり,また,キラルな錯体が得られたりする本研究成果は非常に魅力的であり,今後,有機合成の様々な局面で利用されるものとなるであろう.
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