研究概要 |
本研究の目的はYhhP蛋白質の共通配列ChxPに焦点をあて,その生物学的および構造的役割を明らかにすることにある.その目的のために,CPxPを含む6残基LRCPEPに点変異を導入し,多数のYhhP変異蛋白質を作成した.まず,これらの変異体の機能を調べるためのバイオアッセイ,CD-meltingによる熱安定性,塩酸グアニジンおよび尿素に対する安定性の測定,さらに分子動力学計算による検討を行った.また,そのいくつかのものについてはNMRによる構造決定も行った.次の研究成果を得た. CPxPの機能的役割:機能的に完全に欠損した変異YhhPはC19SとP20A/P22A,部分的に欠損したものはE21Kであったこと,また,変異体C19Sは構造ならびに安定性についても野生型(Wt)と同じであったことより,CPxPは機能的および構造的に重要であることが明らかになった.CPxPのN-cap motif構造的役割:NMRによる三次元構造の解析によれば,変異体P22Aのa1-helixは野生型にくべて2残基伸びたのに対して,P20Aでは1残基だけ短縮した.このような蛋白質の安定性および立体構造の考察からβ1とα1間のターン領域にあるLRCPEPが新規のN-capモチーフであることを提唱した.平成15年度では,電荷残基間の静電的相互作用の効果について検討した.YhhP点変異タンパク質の作成:6配列LRCPEPにおけるR18およびE21に対して逆電荷または中性の残基で直換した8種の点変異体及び2種の三点変異体も作成した.構造安定性に及ぼす静電相互作用の影響:温度,塩酸グアニジンおよび尿素よる変性曲線の解析から融解温度Tm,塩酸グアニジンおよび尿素による変性中点濃度Cmなどの熱力学量を得た.Double mutant cycle法による解析結果から,R18とE21はYhhPの構造安定性に大きく寄与していた.
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