研究概要 |
1.C-末端がアミド化されたジペプチド(Val-Gly-NH2,Ser-Phe-NH2,Gly-Tyr-NH2,Pro-Tyr-NH2)の塩酸塩とそのOH体のX-線結晶構造解析: 分子コンフォメーションは両者ともに優位な差は見られずいずれもエネルギー的に安定な構造を取っていたにもかかわらず、C-末端と隣接分子との相互作用及び水素結合様式に関して顕著な差が見られた。即ちアミド体はCl^-が隣接分子のアミド基間で'head-to-head'型の水素結合を形成しているのに対し、OH体は隣接分子のアミド基とカルポキシル基との間で'head-to-tall'型の水素結合を形成していた。更に水素結合式を、それに関与する極性原子及び官能基の相対配置を基に考察した結果、水素結合能に関してアミドはアミド基の方、OH体はケト基の方がより強いということが明らかとなった。更にペプチド分子の会合様式はC-末端アミド化やCl^-の様なアニオンの共存で大きく変化するということが示唆された。 2.オピオイドμ-レセプターに対して強力なアゴニスト活性を示すendomorphin2(EM2:YPFF-NH2)とそのOH体(EM2OH)の溶液中でのコンフォメーション解析: EM2,EM2OHのNMRによるスペクトル解析の結果trifluoroethylalcohol(TFE)中,軽水中において両ペプチドはPro回りのアミド結合がtrans, cisの両異性体が共存しているのに対し、擬似膜環境下においてはtrans体のみが存在していた。更にROESYスペクトルより得られた各々の距離情報を基にsimulated annealing法を併用した分子動力学計算により溶液中での可能なコンフォメーションを各々50個構築し主鎖の構造に基づいて重ね合わせを行った。その結果TFE,軽水中ではEM2は伸長構造を、EM2OHはその電子状態にかかわらず伸長構造と折れ曲がり構造の両構造を取っていた。それに対して擬似膜環境下においてEM2は伸長構造と折れ曲がり構造が2:1、EM2OHは伸長構造のみが存在していた。以上のことよりC-末端アミドは擬似膜環境下においてはコンフォメーションの形成特にプロリン回りがtransの折れ曲がり構造の形成に寄与していることが示唆されたものの、あまり環境の変化に影響されない一定のコンフォーマーを示した。一方OH体はその電子状態にかかわらずflexibleな立体構造を示した。
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