研究概要 |
高等植物のK+チャネルKAT1には6回の膜貫通領域がある。このうちの3番目と4番目の膜貫通領域は一つずつでは膜に組み込まれる事は無く、一緒に組み込まれる事を見いだした。この,二つの膜貫通領域が膜に同時に組み込まれるという様式は初めて見いだされたものである(研究発表1,2)。この結果は,まだ見つかっていない膜へ組み込みと膜新生の装置があることを示唆している。新しい膜への組み込み様式を理解するためには、さらに研究が必要である。関連する研究結果をまとめると以下の通りである。 (1)K^+取り込み系KtrやTrkHには、K^+チャネルのK^+透過孔が存在するという実験結果が得られた。(研究発表3) (2)K^+取り込み系Ktrは、KtrAとKtrBという2種類のタンパク質がK^+取り込み活性に必要であると報告されているが、光合成細菌のKtr系は、もう一つのタンパク質KtrEが必要であることがわかった。(研究発表4) (3)腸炎ビブリオの生育はK^+で阻害されるので、K^+に毒性があり、それを軽減するためにK^+排出系が必要であり、K^+を排出する新たなK^+/H^+アンチポーターであるNhaP2を発見した。(研究発表5) (4)大腸菌のCa^<2+>/H^+アンチポーターであるChaAはNa^+/H^+アンチポーターであることが知られていたが、同時にK^+を濃度勾配に逆らって排出するK^+/H^+アンチポーターであり、K^+毒性を軽減することを明らかとした。(研究発表6) (5)耐塩性植物創世に関して、淡水生の光合成細菌にNa^+/H^+アンチポーターを、淡水生の光合成細菌にマングローブのベタイン取り込み系遺伝子を、イネにNa^+/H^+アンチポーター遺伝子を導入すると海水で生育できるようになった。(研究発表それぞれ7,8,9) (6)光合成細菌の耐塩性の関与するNa^+/H^+アンチポーターNapAを3種類比較検討を行った。(研究発表10) (7)光合成細菌のCa^<2+>/H^+アンチポーターCAXを分離し、その活性を検討した。(研究発表11) (8)放線菌の抗がん剤を作る遺伝子の発現制御に係わる遺伝子の研究を行った。(研究発表12-15) (9)恙虫病の原因菌の毒性の差は、宿主に対する免疫応答を引き起こすかどうかである事を明らかにした。(研究発表16)
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