研究概要 |
神経栄養因子(NGF、BDNF、NT-3、NT-4)の非神経組織での機能を明らかにする一環として、本研究では、強い精巣毒性を持つカドミウム(Cd)に注目し、その精巣毒性発現過程での神経栄養因子およびそれら受容体遺伝子の発現変動を検討し、神経栄養因子の精巣毒性、精巣機能への関与の可能性を評価することを目的とした。 まず、20μmol/kg体重の塩化Cdを7週齢SDラット、ddyマウスに皮下投与後、経時的にこれら遺伝子の発現を検討したが、これら遺伝子の多くについて、精巣構成細胞の傷害と一致して投与後48〜96時間で発現変動が引き起こった。 次に、5,10,15,20μmol/kg体重の塩化Cdを7週齢SDラット、ddyマウスに皮下投与96時間後にこれら遺伝子の発現を検討した。その結果、精巣構成細胞の傷害性が顕著に認められる15μmol/kg体重以上の投与量で発現の変動がみられた。 さらに、5、10、15、20μmol/kg体重の塩化Cdを3、7および12週齢SDラットに投与後、96時間での精巣におけるこれら遺伝子の発現変動を調べた。3、7週齢では15μmol/kg体重以上で発現の変動がみられたのに対し、12週齢では10μmol/kg体重以上から認められた。これらの変動は、精巣構成細胞の傷害性にほぼ一致していた。 以上のように、神経栄養因子およびその受容体の多くは、Cdの精巣毒性発現に付随して発現変動が引き起こり、その変動には、投与量依存性と週齢差が見られた。したがって、神経栄養因子はCdの精巣毒性発現機構に関与している可能性が考えられ、その役割をさらに追究することにより、Cdの精巣毒性発現機構、神経栄養因子の精巣での機能が明らかになるものと思われる。
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