研究概要 |
我々はこれまでに,ヒト白血球細胞株HL-60が酸化ストレスや放射線照射により容易にアポトーシスにより細胞死に至るが,これに接着班キナーゼFAKのcDNAを導入した細胞株HL-60/FAKは,アポトーシスに対して,高度に抵抗を示すことを明らかにしてきた.FAKを高発現するグリオーマ細胞株などは,抗がん剤に耐性を示すことが知られている.そこでFAKによって誘導される抗アポトーシス機構を解析する為に,FAKならびに変異体を導入した細胞株を樹立し,種々の抗アポトーシスタンパク質ならびに抗酸化ストレスタンパク質の解析を行うことをめざした.すなわち, 1.DNAマイクロアレー法によりFAK導入細胞において,とくに,細胞周期(cdcキナーゼ,サイクリンなど)やシグナル伝達(MAPキナーゼ,TRAFファミリー,c-Relファミリーなど)に関与する分子種の発現上昇が認められた.これらの遺伝子の発現はさらに,RT-PCR法ならびにウエスタンブロットなどにより,確認された. 2.2次元電気泳動法とLC/MS, TOF/MSによる解析により,上記遺伝子のほか,HSP90やタンパク質合成に関わる分子,レドックス制御に関わる分子などの発現上昇を認めた.さらに,これらのタンパク質の発現上昇とmRNA発現との関連,また,これらの分子群の抗アポトーシス作用に果たす役割を明らかにすることができた. 本研究により,アポトーシスと抗アポトーシスに関与するタンパク質の新たな相互作用を明らかにすることができた.今後これらの分子の,in vivoにおけるアポトーシス誘導ならびに抗アポトーシス解除の可能性を検討する予定である.
|