研究概要 |
本研究は,DNAの構造的性質に基づいたゲノムクロマチンの構築とその遺伝子発現制御における役割を明らかにすることを目的として,以下の三つの観点から研究を展開した. 1.in vivoにおけるヌクレオソーム形成に及ぼす特殊DNA構造の影響 真核生物ゲノムに散在するさまざまな種類の単純反復配列が,in vivoでのヌクレオソーム形成に及ぼす影響について,酵母ミニ染色体のアッセイ系を用いて解析した.その結果,ヌクレオソーム形成に対する効果として,阻害的に働く配列から促進的に働く配列まで4つのグループに分類できた. 2.特殊なDNA構造によるクロマチンの改変を利用した転写制御機構の解析 出芽酵母α細胞ではa-細胞特異的遺伝子はα2/Mcm1pによって抑制されており、そのプロモーターではヌクレオソームがポジショニングしている。本研究において、ヌクレオソーム形成を阻害するDNA配列を用いて,出芽酵母ゲノムBAR1遺伝子座およびSTE6-lacZプラスミドにおいて解析した結果,a-細胞特異的遺伝子の転写抑制にはヌクレオソームポジショニングが本質的な役割を果たしていることが実証された. 3.トリプレットリピート配列の特殊DNA構造とクロマチンの構築 神経筋疾患遺伝病の原因となるトリプレットリピート配列(CTG,CGG,GAAリピート)がクロマチン構造と遺伝子発現に及ぼす影響をin vivoで明らかにした.さらに,Friedreich運動失調症の原因となるリピートについて,sticky DNAとクロマチンとの関係について考察した. 以上,DNAの構造的性質がin vivoにおけるヌクレオソーム形成に重要な役割を果たしていることが明らかになった.さらに,本研究は,DNA構造によるクロマチンの改変によって遺伝子発現を人為的に制御できる可能性を示している.
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