研究概要 |
培養ヒト微小血管内皮細胞および周皮細胞を用い,そのプロテオグリカンの発現,特性および合成調節を調査し,以下の結果を得た。 1.ヒト脳微小血管内皮および周皮細胞におけるプロテオグリカンコア蛋白の発現 培養ヒト脳微小血管内皮細胞および周皮細胞におけるプロテオグリカンコア蛋白mRNAの発現をRT-PCR法で調べ,内皮細胞がパールカンおよびビグリカンのみを発現しているのに対し,周皮細胞ではパールカンとビグリカンの他,シンデカン-1,シンデカン-3,シンデカン-4,デコリン,およびバーシカンのコア蛋白mRNAを発現していることが分かった。これらのうち,Western blot分析によって,内皮細胞ではパールカンおよびビグリカンの発現のみが認められたが,周皮細胞ではシンデカン-1,ビグリカン,デコリンおよびバーシカンの発現が蛋白レベルで確認された。 2.ヒト脳微小血管周皮細胞が産生するプロテオグリカンの特性 ヒト脳微小血管周皮細胞が産生したプロテオグリカンのDEAE-Sephacel, Sepharose CL-2BおよびSepharose CL-6Bクロマトグラフィーによる分析の結果,ヒト脳微小血管周皮細胞が産生するプロテオグリカンは主として低荷電で高分子量のヘパラン硫酸プロテオグリカンと低荷電で低分子量のコンドロイチン/デルマタン硫酸プロテオグリカンであることが示された。前者はシンデカン-1に,後者はビグリカンおよびデコリンに対応していることが示唆された。 3.ヒト脳微小血管周皮細胞が産生するグリコサミノグリカン糖鎖の特性 ヒト脳微小血管周皮細胞が産生したグリコサミノグリカン糖鎖の二糖単位を蛍光標識糖鎖電気泳動分析で解析し,この細胞が産生するシンデカン-1のヘパラン硫酸糖鎖が,内皮細胞が産生するパールカンのヘパラン硫酸糖鎖に比べ,特にGlcA/IdoA-GlcN(S)を多く含んでいることが示された。 4.血管内皮増殖因子によるヒト脳微小血管内皮細胞パールカン合成の誘導 血管内皮増殖因子(VEGF-A_<165>)が細胞密度の高いヒト脳微小血管内皮細胞に対して,そのパールカン合成を誘導することを明らかにした。 以上より,ヒト脳微小血管周皮細胞が内皮細胞とは異なるプロテオグリカン分子種を発現しているだけでなく,ヘパラン硫酸プロテオグリカン分子種は特有の二糖組成から成るグリコサミノグリカン糖鎖を結合し,この血管の機能調節に寄与するものと推察された。
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