配分額 *注記 |
3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
2004年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
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研究概要 |
粥状動脈硬化症の進展の一因となるマクロファージの泡沫化は,低密度リポタンパク質の酸化成績体(酸化LDL)の貪食に伴うコレステロールエステル(CE)の過剰産生に起因する。しかしながら,この産生反応において必須となるアシルCoAおよびその前駆体である遊離脂肪酸の供給経路については明確ではない。本研究では,膜リン脂質から脂肪酸を遊離させる酵素の一つにホスホリパーゼA_2(PLA_2)が知られていることから,本酵素が遊離脂肪酸を供給することでCE生成に寄与する可能性について検索した。さらに,酸化LDLは腎メサンギウム細胞でのフィブロネクチン産生を亢進させることで,糖尿病性腎症の進展因子としての役割を担っているが,その産生機構へのPLA_2の関与についても検討した。 マクロファージにおいて酸化LDLにより誘起されたCEの産生反応は,IVA型,IVC型,およびVIA型PLA_2の阻害剤(MAFP)により抑制され,この条件下では細胞の泡沫化も抑制された。しかしながら,VIA型PLA_2の特異的阻害剤の影響は受けなかった。酸化LDL刺激によりIVA型PLA_2の活性化の指標となる本酵素の膜画分での増加が誘起されが,IVA型PLA_2に対するsiRNA発現細胞を用いたところ,CEの増大は対照細胞と同程度に誘起された。そこで,IVC型PLA_2の強制発現細胞を用いて検討した結果,本酵素の発現量の増加に伴いCEの産生量も増大した。一方,酸化LDLは腎メサンギウム細胞でのフィブロネクチン産生を亢進させた。この亢進はMAFPにより阻害され,さらに,この阻害作用は遊離アラキドン酸の添加により消失した。 従って,本研究での結果から,マクロファージの泡沫化の原因となるCEの産生過程においてIVC型PLA_2がそのアシル鎖となる脂肪酸の供給に寄与していること,また,糸球体硬化の原因となるフィブロネクチンの産生にはIVA型PLA_2が関与していることが判明し,両酵素の阻害が粥状動脈硬化症や腎症の進展阻止に繋がる可能性が示唆された。
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