研究概要 |
生きたラットの体内における微量元素の動態をin vivoマルチトレーサー法により外から非侵襲的に評価する方法を確立した。腹部においては、V, Mn, Co, Zn, Se, Rb, Yが多く検出された。これはおもに重金属の蓄積する肝臓における分布に由来している。Be, Zr, Y、Ruは腹部では相対的に低い分布を示した.とくにSeの分布は正常群と酸化的ストレスモデルとして用いたSe-欠乏群ではトレーサー投与60分間では後者の方が大きくなることが示された.非侵襲測定はトレーサーの投与後、数10分内における元素動態の情報を得るのに適している。ラットは週齢や本研究で用いた酸化ストレスモデルでは、体重や臓器の大きさが異なる。また、ラットの外側からγ線を測定して、ある測定部位での元素分布を評価するには内部標準の必要が認められた。^<74>Asはおもに赤血球に分布することから、血液中におけるほかの元素に対する内部標準となり得る。^<83>RbはKと同じアルカリ金属で体内では細胞質にあり、各種臓器にほぼ等しく分布するので組織内での他の元素の標準となり得る。^<74>As/^<83>Rb比は血液/組織比の指標となり、この比の減少は、虚血の指標となる。^<74>Aと^<83>Rbは長時間に渡り、濃度が一定あるため、測定部位における他の元素の組織あるいは血液中の標準となり得ることを示した。^<103>Ruは血漿と細胞間隙に存在し、細胞内には入らないので、^<103>Ru/^<83>Rbも血液/組織比の指標となる。さらにこれらの核種の放射能に対して他の核種の放射能強度比として評価することにより、新しい微量元素動態の指標となることを提案した。
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