研究概要 |
温度感受性simian virus 40(tsSV40)大型T抗原遺伝子導入トランスジェニック(TG)マウスは,特異的機能を保持した不死化細胞株樹立に非常に有用な動物で,これまでに多数の臓器から数々の機能を保持した有用な細胞株が樹立された.また,同遺伝子導入TGラットも特異的機能を保持した不死化細胞株樹立に有用であることが示されている.今回我々は,tsSV40大型T抗原遺伝子導入TGマウスとラットから機能を保持した精巣セルトリ細胞株TTE3,RTS3-3と精巣ライディッヒ細胞株TTE1,種々の胃粘膜上皮細胞株樹立に成功した. cDNAマイクロアレイは,スライドガラス上に多数のcDNAを高密度にスポットしたもので,網羅的に遺伝子発現を解析できることからポストゲノムシーケンス時代における非常に重要な技術として注目されている.我々は,この技術を利用して,細胞の機能変化によって発現変動する遺伝子を数多く明らかにした. ビスフェノールA(BPA)の精巣セルトリ細胞への暴露によりCa^<2+>-ATPase阻害作用に基づく細胞内カルシウム濃度の一過性の上昇に続いて小胞体ストレスが誘導され,時間依存的に細胞障害が惹起された.約2,000種類の遺伝子の発現を検討した結果,BPAにより1/2以下に発現量が減少する遺伝子が3種類,2倍以上に増加する遺伝子が39種類同定された.これらの遺伝子は,6,12または24時間に発現量がピークになる3グループに分けられ,各々c-mycとfra-2,オルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)およびchopの発現変動が顕著であった.BPAはGRP78,HSP90,chop,酸化ストレス誘導タンパク質,ODC等のストレス関連遺伝子の発現量を顕著に増加させた.
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