研究概要 |
[目的]BALB/3T3細胞形質転換試験は,非変異・がん原性物質を形質転換促進物質として検出することができる.12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセテート(TPA),オカダ酸(OA),オルトバナジン酸塩(VA)及びノニルフェノール(NP)は,形質転換を顕著に促進する.非変異・がん原性物質の作用機序の解明と短期検索法の開発を目的として,形質転換促進物質によって細胞に誘発される遺伝子発現変化を調べた.[方法]mRNAディファレンシャルディスプレイ法により発現に差があるmRNAを検索し,RT-PCRにより差発現を確認した.発現が変動した遺伝子の転写因子結合配列をコンピューター解析した.[結果]TPAとOAによってLy6e,Ass1とNudt9の,OAによってLgals3bpとPlatの,NPによってSsbとSned1の発現が上昇した.TPAとOAによってThbs1とGenBank EST DivisionのBY594155の,TPAによってAI428795とSparcの,OAとNPによってVimの,OAによってRp13の,NPによってND1の発現が低下した.発現変動があった遺伝子には多様な転写因子結合サイトが存在した.E2A_CS, EKLF_CS, LyF/Ikaros_site, Yi-consensus, Z_box_(Zta)が多くの遺伝子に(12/13)に存在した.CNBP-SRE,ADD1/SREBP_site_(2),vaccinia-term-sequenceは,発現が上昇した遺伝子の多く(5/7)に存在したが,低下した遺伝子には全く存在しなかった.[結論]TPAとOAには,共通した遺伝子発現変化が認められ,二つの物質にはBALB/3T3細胞に対して共通の作用があることが示唆された.一方,発現変動のタイムコースが異なることや4つの形質転換促進物質に共通する発現変化はなかったことから,遺伝子発現変化を指標とする非変異・がん原性物質の簡便な検索法を開発することは困難である可能性が示された.得られたデータは,発がんプロモーターの作用機序解明のために有用であると考えられる.
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