研究課題/領域番号 |
14572128
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
医療社会学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
野口 善令 京都大学, 医学研究科, 助手 (30293872)
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研究分担者 |
松井 邦彦 熊本大学, 医学部附属病院・総合臨床研修センター, 講師 (80314201)
福井 次矢 京都大学, 医学研究科, 教授 (50208930)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2003年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
2002年度: 2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
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キーワード | 臨床疫学的診断思考能力 / 仮想症例シナリオ / 検査特性 / 検査前確率 / 検査後確率 / ベイズの定理 / 行動閾値 |
研究概要 |
本研究では、平成12〜13年度科学研究費補助金研究「医師の臨床疫学的診断思考能力の評価指標の開発」で考案した指標を使用して、若手医師の臨床診断能力を測定、分析した。 今回の研究期間内では、上記で我々の考案した臨床診断能力評価指標が、知識を習得し、臨床経験を積むことで向上しているかどうかについてのデータを得ることを目標とした。 11の教育指定病院の1-2年次の内科系研修医、および卒後5年前後の内科系若手医師を調査対象とした。質問票を使用してアンケート調査を行い262名から回答を得た。 分析の結果、以下の知見が認められた。 (1)検査前確率が高い症例で検査結果が陽性の場合には、確定診断を下すことが可能である。 (2)検査前確率が低い症例では、臨床症状から検査前確率を推定する能力が十分でないため、検査結果の如何にかかわらず除外診断ができない。 (3)検査前確率が中程度の症例では検査結果の情報を有効に利用できず、検査後確率を十分変化させることができない。診断推論をベイズ確率論的に捉えて応用できないためであると推定される。 (4)検査前確率から予想される検査結果と実際の結果が逆の場合、すなわち、検査前確率が高い症例で検査結果が陰性の場合、検査前確率が低い症例で検査結果が陽性の場合に、検査結果の影響を過大に評価してしまう。 (5)検査前確率が高い症例の検査前確率の推定は卒後経験年数が増えるに従って改善を示した。検査前確率が低い症例の検査前確率の推定は、卒後経験年数が増えるとともにある程度の改善が見られたが十分ではなく、実質的な除外診断にはつながらないと推定された。 (6)いずれの卒後年次でも検査後確率をベイズの定理に従って、確率的に正しく推定していない傾向が見られたが、この傾向にはシナリオや卒後年数によってパターンにばらつきが見られ、卒後年数の間には、一定の変化は認められなかった。 研修医は典型的な症状を有し検査結果が陽性の症例では検査前確率を比較的正しく推定できるが、検査前確率が低い症例では検査前確率の推定が高すぎるため、病歴から除外診断ができない。また、診断を確率論的にとらえられず検査結果の情報を有効に利用できていないと考えられた。この傾向は、卒後経験年数が増えても改善が見られず、確率論的診断推論の能力は、臨床経験により自然に獲得できないことが示唆された。 本研究の結果から、臨床疫学的診断思考法を用いた教育プログラムを開発し、卒前、卒後教育にとりいれることにより、臨床医の診断推論の能力の向上に寄与することができると推測される。
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