研究概要 |
救急搬送の質的問題を検討するには、重症度患者の搬送の実態を明らかにすることが必要である。病院外心停止(OHCA)症例は、最も時間的、空間的要因に影響されるが、長期的予後との関係を見たものは殆どない。そこで、大阪市ならびに大阪府全域の公立消防局の救急隊が全域を網羅して展開されているOHCAに関する記述集計プロジェクトであるウツタイン大阪プロジェクトで得られたデータを解析した。その結果、次の事柄が明らかになった。 1.救急サービスを受けている住民約8,800,000に対し、1998年5月から2001年4月の間で15,211のOHCA症例が確認され、蘇生は14,609例で試みられた。2,957例が心原性であり、90例(3.0%)が1年問生存していた。383例の除細動例については、119番通報から細動除去までの時間は各年度の中央値が14.5、13.0、11.5分と、有意に減少した。 2.搬送されたOHCA360例のうち1週間以上生存した46例を対象とした。61%は心原性心停止で、心室細動は20%であった。社会復帰10例のうち心室細動は5例に認められ、入院1週間後のJapan coma scale(JCS)は10以下であった。人工呼吸期間は5.0±4.9日であった。 3.1998年5月から1年間にOHCAは5,047例記録されたが、うち小児(15歳以下)は147例であった。その発生頻度は10万人当たり年間10.3で大人(16歳以上)より有意に少なかった。しかし、乳児の発生頻度は10万人当たり年間79で、大人より有意に多かった。心原性心停止、目撃のある心停止の割合が大人より少なかったがbystanderによるCPRの割合は多かった。1ヶ月生存率は大人より高かった。小児のOHCAのおよそ半数が乳児であるが、そのうちの41例に乳幼児突然死症候群(SIDS)の疑いがもたれた。
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