研究概要 |
全国の国立大学附属病院、公立病院や民間病院156施設の参加の下、1年間にわたる真菌血症全国サーベイランスを実施した。血液から分離されたCandida属565株についてNCCLS法に準拠した微量液体希釈法を用いた抗真菌薬感受性結果、臨床背景に関する情報集積を行った。分離上位5菌種はC.albicans 218株(40.7%)、C.parapsilosis 123株(23.0%)、C.glabrata 96株(17.9%)、C.tropicalis 62株(11.6%)、C.krusei 13株(2.4%)であった。 MIC50/MIC90(48時間計測)はamphotericin B 0.125/0.25μg/mL、fluconazole 0.5/32、新規抗真菌薬であるvoriconazole、micafunginでは各々≦0.031/0.5、0.016/1であった。Fluconazole耐性率は7.8%であり、単変量解析では、年齢、基礎疾患が造血器悪性腫瘍、免疫抑制剤投与および好中球減少が、多変量解析によると、造血器悪性腫瘍(P=0.009,オッズ比6.6,95%信頼区間1.6-26.9)のみがFluconazole耐性と有意に相関しており、抗真菌薬予防投薬の普及の影響が考えられた。 更に治療内容および予後の情報まで収集された242症例において、1ヶ月生存を予測する因子の解析を試みた。1ヶ月生存率は、68.4%であり、単変量解析では菌種(C.parapsilosis)、年齢(70歳未満)、好中球減少なし、腹部手術後、適切な抗真菌薬治療、中心静脈カテーテルの抜去、が有意に1ヶ月生存と相関していた。多変量解析では、菌種(C.parapsilosisであること,P=0.009,オッズ比3.3,95%信頼区間1.2-9.0)、適切な抗真菌薬治療(P=0.03,オッズ比2.1,95%信頼区間1.1-4.1)、中心静脈カテーテルの抜去(P<0.001,オッズ比6.0,95%信頼区間2.2-16.1)のみが1ヶ月生存と相関する独立因子であった。すなわち、Candida血流感染症患者の予後改善のためには中心静脈カテーテルの早期抜去と十分量・期間の抗真菌薬投与を推進すべきであることが示唆された。 これらの研究成果は、わが国初のCandida血流感染症全国規模サーベイランスから得られた大変貴重なデータであり、深在性真菌症診療ガイドライン作成時における極めて重要な資料となるものと考えられた。
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