研究概要 |
キャピラリー電気泳動装置を用い血清中のリポ蛋白の分子構造の変化から分析法を確立した。本法は陽極側からHDL(f, i, s)3分画,IDL,カイロミクロン,VLDL, IDLとLDL(f, i, s)3分画の総計9分画を25分で測定することができる。健常者血清の測定値はポリアクリルアミド電気泳動法(リポフォー)の測定値と近似し,良好な相関を得たが,高脂血症患者等の試料では乖離する測定値もみられ,リポフォーやHDLコレステロール,LDL-コレステロール直接測定法がそれぞれ,ミッドバンドのみではなくVLDL分画を含んで測定していることを示唆するデータを得た。さらに,本法の各分画とアポ蛋白との関係を検討し,HDL, LDL, VLDLの大分類では従来から報告されているリポ蛋白中のアポ蛋白の分布と相似しているが,HDL, LDLそれぞれの分画中(f,i, s)でのアポ蛋白の分布はそれぞれに均一ではないことが示唆され,本法の測定値が脂質代謝系酵素や受容体との関係を解明できる可能性が示唆された。また、健常者ではfHDL分画が高傾向にあり,TG高値者はsHDL, fLDL, VLDL分画が高値傾向、iLDLが低値傾向、CK高値者,ALT高値者は健常者に比し、VLDL分画が高値傾向であった。一般に用いられている臨床指標(Index)であるリポフォーのMI (migration Index)は本法のVLDLと強い相関があり,本法のVLDLの増減がsmall dense LDLの存在の有無を判断する方法となりうる可能性が示唆された。また,LDL-CとapoB比(LDL-C/apoB)は,本法のfHDL, iHDL, iLDLとの間に有意な相関が認められ,さらにapoA-IとapoBの比(apoA-I/B)は本法のfHDLと強く相関した。これらの研究から本法の各分析値が冠状動脈疾患などの新たな臨床指標となりうることが示唆された。
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