研究概要 |
PCR ribotyping法による解析で、同一タイプ、type smzに分類されるClostridium difficile菌株が日本で複数の病院で院内集団発生の原因となっていることがわかっている。本研究では、C.difficile菌株間で多様性があることが報告されている遺伝子(slpA)をシークエンシングすることによるタイピング(slpA sequence typing)を用いて、第一に、異なる10病院において分離されたtype smz株10株について解析した。検討した10菌株において、3タイプ(smz-1,smz-2,smz-3)が認められたが、集団発生の流行株になりやすいタイプは認められなかった。第二に、ニューヨークの病院での流行株(BrazierらのPCR ribotype 1)と比較したところ、slpAの相同性はアミノ酸で38%であり、欧米で流行している菌株とは異なる株であることが明らかとなった。第三に、糞便検体から直接抽出したDNAにおいてslpA sequence typingによる解析を試みた。検討した22糞便検体では、17検体で糞便検体から抽出したDNAにおいてタイピングが可能であり、そのうち12検体でC.difficile培養陽性であった。これらの12検体では、ダイレクト・タイピング結果と分離菌株におけるタイピング結果が一致した。5検体では培養陰性で、ダイレクト・タイピングのみが可能であった。slpA sequence typingは、インターネット等によりタイピング結果が異なる研究室間でタイピング結果を共有できる点が大きな利点であり、さらに、臨床検体、特に菌量の少ない検体や培養検査に適さない検体において、有用な方法であると考えられた。
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