研究概要 |
本研究は皮膚冷刺激を用いた高齢者下肢筋力訓練法を開発するために,冷刺激を用いた筋力トレーニングの有効性を実証することが狙いであった。その目的を達成するために,1)皮膚冷刺激を用いた筋力トレーニング効果の検討2)皮膚冷刺激がdynamic収縮とstatic収縮の筋活動に及ばす影響3)皮膚冷刺激トレーニングを効果的に用いるための皮膚冷刺激温度の検討4)皮膚冷刺激が低負荷筋力trainingとdetrainingに及ぼす影響5)高齢者への皮膚冷刺激を用いた軽負荷筋力トレーニングの検討の実験を行った。その結果, 1)皮膚冷刺激を用いることで従来,筋力トレーニング負荷として用いられている強度よりも低い強度でHT-MUsの参画が得られ,高い筋力トレーニング効果が期待できることが示唆された。 2)dynamic収縮はstatic収縮に比べ有意な筋力増加が得られたことから,皮膚冷刺激を用いたトレーニングを行う場合,dynamic収縮の方が有効であることが示唆された。 3)HT-MUsは26℃以上で促通効果を示し,LT-MUsは26℃以下になると抑制傾向が強く現れた。この結果より,筋力トレーニングに皮膚冷刺激を用いる場合,皮膚温を26℃前後までとすることが重要であることが確認された。 4)6週間の皮膚冷刺激筋力トレーニング後,detrainingにおいても筋力増加の効果は残存し,皮膚冷刺激を用いることでトレーニング効果を長期間維持できることが示された。 5)高齢者においても週1回の低負荷トレーニングで従来用いられている高負荷筋力トレーニングと同様の効果が得られ中高年者やレハビリテーションに応用できることが示唆された。 以上の結果,皮膚冷刺激法は実際の筋力トレーニングに対し速筋の選択的トレーニングとして有効であることが実証された。さらに低負荷で高い筋力利得が得られることは,筋組織の再生能が低下している高齢者やリハビリテーション中の患者に対し筋損傷の危険性を少なく抑えることができ,高い効果を得られることから今後の応用性が期待できるものである。
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