研究概要 |
目的:自動車排気ガスに含まれる窒素化合物や浮遊粒子状物質等は,道路沿道で頻繁にトレーニングを行うスポーツ選手にとって健康に障害を与える可能性がある.そこで本研究は,自動車排気ガスによる大気汚染が著しい地域と汚染が少ない地域での持久的運動が血液生化学的物質に及ぼす影響について検討した. 方法:被験者は成人男性10名を対象とし,大気汚染地域(P群:皇居一周)および非汚染地域(N群:幹線道路から離れた大学構内のグランド)を走行する2つの実験条件を実施した(約5km).運動中は心拍数を測定し,運動前後には採血を行い,アドレナリン,ノルアドレナリン,ビタミンE,過酸化脂質,NK細胞活性,IgE抗体,白血球数,赤血球数,ヘモグロビン,ヘマトクリットを測定した. 結果:運動時間および運動時心拍数はP群において高値を示した.ノルアドレナリン,ビタミンE, NK細胞活性,白血球数は,運動後において両群とも有意に増加した.過酸化脂質は大気汚染地域において,アドレナリンおよびIgE抗体は非汚染地域においで運動後に有意に増加した.白血球数の増加率は大気汚染地域で高値を示した.運動後における両群の比較では全ての測定項目に有意差は認められなかった. したがって,大気汚染地域での一過性の持久的運動は,パフォーマンスを低下させ,渦酸化脂質を有意に増加させるものの,免疫機能への影響は少ないことが示唆された.
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