研究概要 |
日常生活では低強度筋力レベルでの動作が多く,体育およびスポーツの場面においてもより巧みな動作が要求されるほど小さな力の調節が重要となることから,低い強度の筋力調節のメカニズムを解明することは重要な意味をもつ.筋線維の長さ変化は張力発揮能に影響を及ぼす要因であり,筋収縮中の長さ変化の観察は生体内での筋の張力発揮様相の一端を知ることを可能とする.MRIや超音波では,単一運動単位レベルの指標を経時的に捉えることは困難である.Morimotoの方法は,表面筋電位を基本とし,単一運動単位の活動(放電様式)と運動単位における筋線維群(筋単位)の長さ変化を同時に経時的に観察することが可能である.本報告では,この方法を用いて随意低強度筋力発揮における筋単位長変化と運動単位活動の相互の関係について明らかにすることを目的とした.得られた結果は次の通りであった.1)筋単位長推定の精度を高めるには,内側広筋においては,運動単位活動電位波形の導出を運動終板帯から約2cmより末梢側で行う必要があった.2)等尺性筋力発揮に15%MVCまでの範囲で筋単位長は5%以上短縮した.この短縮は,放電間隔短縮と直線的関係をもたなかった.3)持続的筋力発揮時約3分目まで筋単位長は約5%短縮した.この間,放電間隔は延長した.4)振動刺激誘発筋力発揮においても時間に伴う筋単位長の短縮が観察された,しかし,随意筋力発揮と比較し短縮量が小さかった.以上のことから,低レベルの随意筋力発揮において筋単位長は短縮し,その変化は複数の運動単位活動に影響を受けている可能性,また,持続的筋力発揮においては放電間隔延長と相互に関係している可能性が示唆された.したがって,低レベル随意筋力調節機構を明らかにするためには,今後さらに筋単位長と運動単位放電様式関係について追求していく必要性が考えられた.
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