研究概要 |
本研究においては人材派遣ビジネスの産業的特性を踏まえて,その立地合理性を演繹的に導出し,実際の立地動向の分析と併せることで,当該産業の事業所立地の一般性を明らかにすることを目的とした研究を行った。分析の結果,以下の諸点が明らかとなった。 1)人材派遣業は規模を追求するビジネスであり,全国の主要都市に事業所を展開する企業が出現している。また,専門的な市場に立脚したビジネスとしても成立し得る。近年は,規模と専門性を同時に追求する総合人材業化を目指す企業が増えている。 2)人材派遣事業所の立地は,三大都市,なかでも東京特別区への集中が顕著である。これは東京が最大の需要地であることや,専門的な派遣業成立することが要因となっている。また,(準)広域中心都市への立地も相対的に多く,顧客となる本社・支社等のオフィス立地数に比例した展開がみせている。 3)都市圏レベルでは,中心都市の都心を指向したものとなることが演繹的に導かれたが,広島市と福岡市を事例とした分析によっても都心部(オフィス街)への集中が確認された。これは,顧客となる事業所へのアクセシビリティと登録者を集めるための利便性を同時に追求した結果である。 4)大手企業を対象とした分析では,事業所の立地は三大都市から始まり,(準)広域中心都市,県庁所在地級都市へと都市階層,言い換えれば市場規模に応じて立地が進められたことが明らかとなった。 本研究での考察を通じて,人材派遣業の事業所立地の一般性はある程度明らかにできたものと思われる。しかしながら,人材派遣業の立地を介して成立している労働市場の特性については,ほとんど言及することができなかった。そして,こうした人材労働市場の拡大が,現代日本の労働市場に及ぼす影響や意味についても研究の射程を広げていく必要があろう。これらは今後の課題としたい。
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