研究概要 |
本研究の目的は,機械金属工業が集積する地域(岩手県北上・花巻両市と山形県米沢市)を対象にして,産業集積の維持・活性化に対する産業支援諸制度の地域的な役割を,各地の独特の集積構造と産業支援システムとのインターフェースを考慮した地域間比較の手法によって,解明することにあった.その際,支援システムの形成・再構築,現実的な運用が経路依存性をもち,すぐれて地域的文脈(コンテクスト)に左右されることに着目して,実態に迫るとともに,比較検討した.明らかになった知見を岩手・山形両県に共通する部分からまとめると,以下の通りである. 第1に,創造的な知を生み出すための「学習の組織化」が新たな産業・企業支援の「ソフト」のベースになる.第2に,そうした組織化をつくり出す個々のネットワークは社会的環境ネットワークの側面を持たざるを得ない.第3に,個々のネットワーク間および個々の産業・企業支援施策間の重層的なネットワーキング(リンク)性が重要であり,それらが相互補完的である時に,なおいっそう効果的になる.第4に,個々のネットワークおよび個々の産業・企業支援施策は地域外との協力が必要である.そうした域外との関係が維持されるとき,交流は「内の結束」を高めるとともに,自らの活動を相対化することができる.第5に,ローカルな種々のネットワークと産業・企業支援施策の形成は,各地のローカルなコンテクスト(ローカルなユニークネスとコンティンジェンシー)を反映している.最後に,産業・企業支援の母体となる組織(ネットワーク)が産業・企業支援に共通するインフラストラクチャーとして機能するかどうかが重要である.
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