研究課題
基盤研究(C)
今回、「わが国大都市における渇水対策の整備状況の比較研究」のテーマで本報告を作成したのは、水資源問題を大局的な見地から捉え、かつ、議論をしていくことの必要性を考えたからである。従って第I章では、わが国の水資源問題の捉え方を、海外の水資源問題をめぐる状況との比較、わが国における水資源利用の歴史性に焦点を当てて検討を行った。大都市の渇水問題を考えていく場合、わが国の水利用をめぐる歴史的特性、社会的性格を明らかにすることによって、初めてその本質が明らかになる。その場合、わが国においては農業用水部門の水利用全体に占める役割の大きさが圧倒的に大きいことから、当初から農業用水部門を取り込んだ分析視角を立てていかないと、渇水問題の本質は明らかにならないことを指摘した。続いて第II章では、わが国の主要14都市の水資源政策の展開を、水需要の推移、水供給体制の変化に焦点を当てて検討した。その結果、わが国の大都市において、現在、明らかに水資源政策を転向させるべき状況となっているにも拘らず、水資源政策に根本からの変化が見られないことが明らかになった。そして、政策転換がなかなか実現しない理由として、水需要推移に全く対応しないまま、既存開発計画の忠実な実行だけを目的に、ダム・河口堰の建設を進める国・地方自治体の体制があることを指摘した。第III章では、名古屋大都市圏を事例として、木曽川水系の水資源開発政策、特に2004年に行われたフルプラン改正に焦点を当てて、その問題を検討した。その結果、まさに木曽川水系のフルプラン改正内容そのものに、わが国水資源政策の有する問題の本質が含まれていることが明らかとなった。
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金城学院大学論集社会科学編 3
ページ: 1-28
Treatises and Studies by the Faculty of Kinjo Gakuin University, Studies in Social Sciences N0.3(now printing)