研究概要 |
都市のヒートアイランド化は,人間活動による排熱の影響が大きいとされているが,それに加えて都市周辺の地表面被覆が改変されたことにより,アルベドや放射率などの分光特性が変化し,その結果として熱収支が変わったことの影響も大きい。本研究では,これら2つの効果を識別し,それぞれの定量的評価を可能とする新たな解析方法を開発した。昨年度に構築した都市域の熱収支モデルを基に,人為的な廃熱等に起因する顕熱(人工顕熱)と,太陽放射と大気放射に起因する顕熱(自然顕熱)を識別できるように改良した。本モデルでは,衛星データと気象データを用い,地表面熱フラックス(正味放射,地中伝導熱,顕熱,潜熱)の瞬間値を個々に算出する。顕熱フラックスは,バルク法により地表面と大気の温度差から求める。それ以外の熱フラックスは,比較的地表面温度上昇の影響が小さいと考えられるため,それらの熱フラックスの計算結果を太陽放射による熱収支式に代入して得られる差分を,人工排熱や地表面の蓄熱を起源として顕熱が増加した量であると考えた。このモデルにより,名古屋周辺を対象として熱収支解析を行った。モデル入力は,ASTERやLandsat/ETM+などの高分解能衛星リモートセンシングデータから求めたパラメータと,気象台やアメダスの気温,日射量,風速データ等を用いた。その結果,季節による日射量の変化や冷暖房の需要を反映した結果が得られた。また,土地被覆が都市である地点は昼夜に関らず,他の土地被覆地域に比べ顕熱フラックス増加量が高い分布を示したことから,本研究の手法で都市における放熱による効果を推定可能であると考えられる。このように本研究で開発した熱収支解析方法は,都市域のヒートアイランド化の解明に極めて有効であることが確認された。
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