研究概要 |
本研究は石灰岩が広く分布する琉球列島の島々で,石灰岩が急斜面(崖)をつくる場所,石灰岩台地の縁,石灰岩の海岸をとりあげて,石灰岩の崖・石灰岩の崖の基部にあるノッチの深さ・崖の前面にある崩落ブロックの大きさ・石灰岩の崖の陸側にあるテンションクラックの測量、および撮影年度の異なる空中写真の判読によって、石灰岩の崖の崩落後退による地形変化を定量的に明らかにし,地形変化をもたらす石灰岩の崖の崩落を板状崩落のモデルを用いて力学的に解明しようというのが目的である。 沖縄島荒崎海岸,万座毛海岸,宮古島東平安名崎の海食崖,喜界島の段丘崖を研究対象として,岩石の物性に関する室内試験と現地調査を行い,以下の結論を得た. (1)琉球石灰岩の一軸圧縮強度は,調査地点とは無関係に,密度あるいは間隙率と良い相関関係がある. (2)琉球石灰岩の一軸圧縮強度は,寸法効果をもつことが判明し,寸法効果による岩盤強度を推定する式を作成した. (3)片持ちはりのモデルに岩盤強度の推定式を用いて海食崖に関する力学的安定解析を行ったが,より現地の状況に即した安定解析を行うため,海食崖に発達するテンションクラックの深さの影響を考慮した新たなモデルを作成した.このモデルによる安定解析によって,すべての海食崖の崩壊を説明できることがわかった.したがって,琉球石灰岩からなる海食崖の崩壊は,寸法効果による岩石強度とノッチの発達に伴うテンションクラックの深さによって,コントロールされうることがわかった.しかしながら,喜界島の海成段丘に発達する琉球石灰岩からなる段丘崖の崩落条件について,本研究で作成したモデルを適用したところ,うまく説明できなかった.したがって,本研究で作成されたモデルは海食崖の崩壊について有効であることが示唆される.
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