研究概要 |
ヒマラヤ東部地域のかなりの範囲について1960年代に撮影されたCORONA衛星写真と2000年代のASTER画像を比較して解析作業をおこなった.ブータン中央部とその北側のチベット部分でも解析をおこない,氷河の縮小と,氷河湖の拡大を明らかにした.東ヒマラヤとの比較の意味で,高緯度地方にあり,インド・モンスーンの影響が少ない天山山脈東部においても,その氷河縮小と,モレーン形成についてまとめた.さらに,パミール=アライと西テンシャン山脈においても,その氷河縮小を明らかにした.氷河は1960年代から1980年代におおきく縮小した. 多くの氷河湖は1980年代に大きく拡大した.そして,2-3の特に危険な氷河湖を特定することができた.とくに,チベット側には最近決壊した湖や危険な湖が存在し,下流のヒマラヤ南面に大きな災害をもたらす可能性がある. 2003年度,集中的に作業した中央ブータン,チャムカール川流域源頭のチャブダ氷河湖については,差し迫った危険はないことがわかった. ブータンの永久凍土の分布について岩石氷河を指標にして調査し,その下限を明らかにした.これは,モレーンダムの強度の評価に必須の情報である. 氷河湖の決壊洪水の危険度評価の評価手法の指針を検討し報告した.その結果の一部として,1967年に地質学者A.Gansserが描いた氷河と氷河湖のスケッチの信憑性を評価できた.その過程で,CORONA衛星写真の利点・欠点,東ヒマラヤ地域で利用する場合の問題点を明らかにできた.
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