研究概要 |
本研究では合理的コストで衣服を個人対応カスタマイズするために衣服の対話型三次元CADを提案し、実用化のための要素技術の開発とスラックスおよびドレスシャツ用パタンリメイクシステムの試作を行った. システムは衣服の三次元形状を作成・編集する衣服3次元CAD,個人の体形に対応するための変形可能な人体モデル,モデルと衣服の対応を司るスケーリングソフトウェア,三次元形状から設計図であるパターンを作成ソフトウェアで構成される. 衣服3次元CADは,衣服の形状を着用者の体形,サイズ,デザインの好みにより,編集するためのものである.衣服のマスター形状は着用状態の形状を3次元計測して得た.3次元計測された形状は欠損部やノイズが多いため,これからスライスラインを抽出し,ポリゴンを再構成する手法を用いた.また,衣服上の基準位置を認識するために立体マーカーを用いる方法を提案した. 得られた衣服形状から構成線および寸法変化に対応する線を抽出し,パーツに分解し,型紙と3次元形状の対応付けを行った.対応付けは型紙製作知識を基に行った.これにより,対話型でサイズや好みに応じて衣服各部分の寸法変更を可能とし,結果は3次元形状と型紙に反映される. また,正確な個人対応のパターン・デザインのために10ヶ所の寸法がコントロールできる人体モデルを作成した.人体の寸法と三次元形状,型紙は型紙構築知識をもちいて,連動し,衣服モデルと型紙は、人体モデルを対話型に変形することにより、適切に修正できる。 これらの開発技術を用いてスラックスおよびドレスシャツを対象としてパターンリメイキングシステムを試作した.本システムは3次元着衣形状データから成る衣服モデルとその複製パタンを対話的な操作により再修正し,体型や好みのシルエットに合わせて新たにパタンをデザインするという構成を持つ.システムでは,衣服・人体の3次元モデルの静的な着装シミュレーションを行い,立体モデルにおけるシルエットや体型への適合性の評価,断面視点によるゆとり量の評価,パタンの評価の3つの視点が連動し,対話的にパタンの修正を行なうことができる. 本システムを用いて,既存寸法の衣服の合わない人の体形に合わせて,スラックスおよびドレスシャツを製作した結果,着じわの少ない,よりフィットした衣服が得られ,本システムの有効性が確認された.
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