研究概要 |
本研究は,「男は仕事,女は家庭」という性別役割分業意識の再生産メカニズムに関する韓国と日本の国際比較研究である。特に,教育に携わる教師のジェンダーをめぐる教師の意識の多次元性を明らかにし,教育の場における隠れたカリキュラムを探ることを目的とし,「小・中・高校の教師の性別役割分業に関する調査」というタイトルで教師を対象に調査を実施した。調査期間は,韓国の場合は平成15年7月から9月の間,日本の場合は平成15年11月から平成16年2月の間である。韓国の場合は620部配布して有効回答が得られた604部を,日本の場合は624部配布して有効回答が得られた384部を分析の対象とした。分析の結果を簡単にまとめる。(1)「男は外で働き,女は家庭を守るべき」という意見に,韓国の教師の19.9%が支持し,80.1%が否定,日本の教師の23.0%が支持し,77.0%が否定している。(2)「学校教育は性別に拘らずに行った方がよい」という意見には,韓国の教師の81.7%が支持し,18.3%が否定,日本の教師の79.7%が支持し,20.3%が否定している。(3)「女性もすべての領域で男性と同等に競争する能力を持っている」という意見には,韓国の教師の95.2%が支持し,4.8%が否定,日本の教師の85.8%が支持し,14.2%が否定している。以上の項目からは,教師の多くは,性別役割分業を支持しないし,男女の能力の差はないと考え,教育も性別に拘らずに行う方がよいと考えていることが分かった。しかし,一方では「男性と女性はそれぞれ行うべき役割が異なる」という意見には,韓国も日本も半数以上の教師が支持している。これらの結果から,教師の多くが,性別役割,教育などをめぐって多様な意識を持っていることが明らかになった。
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