研究概要 |
近年、環境ホルモン作用検出のための種々の試験法が開発され、被疑物質とされていた環境中の化学物質の内分泌撹乱作用が次第に明らかにされている。農薬も被疑物質とされているが明確な検証はまだ不充分である。本研究では、(1)XX/XYとZZ/ZWの二型の性決定機構をもち、遺伝的全♂や全♀の作出が容易(2)ホルモン感受期は受精後20-22日の3日間(3)減数分裂開始期が雌雄で異なり40日令の生殖腺で性が判定できるなどの特性をもつツチガエルに着眼して申請者らが確立した環境ホルモン作用のin vivo評価試験法(遺伝的♂XZ試験法)で、4種類の農薬のエストロゲン作用を調べることを目的とした。また、それを一層高精度な試験法として改良するため曝露材料を遺伝的♂ZZに変えてその作用を調べ、両者の結果を比較することを試みた。 評価試験の対象とした農薬はエンドサルファン(ENP),カルバリル(CAR),トリフルラリン(TRI)およびアトラジン(ATR)で、濃度はENDが0.1,1,5nM、他はそれぞれ0.01,0.1,1μMの3種類で約30個体づつを薬浴曝露した。対照群には0.01〜1μMのエストラジオール-17β(E2)と0.01%エタノール溶液を用いた。全個体を受精後40日で固定し、生殖腺の内部構造から♂・♀・間性を判定して、対照群と各農薬曝露群の結果を統計処理して得た有意差でエストロゲン様作用の有無を判定した。 その結果、担体対照群の全個体は精巣構造を、陽性対照群の1μME2処理の全個体は卵巣構造を示した。遺伝的♂(XZ)の試験法では、ENDとCARにはエストロゲン作用または抗アンドロゲン作用がないことが、TRIは微弱の、ATRでは強いその作用があることが分かった。 一方、遺伝組成の異なる遺伝的♂(ZZ)に0.0001〜1μM濃度でCAR曝露をした結果、高濃度群で卵巣や雌雄同体の個体が少数出現し、統計的にも有意差が確認されてCARのエストロゲン様作用を検出した。 結果的には、既成の試験法で材料の遺伝的組成をXZからZZへ変更するだけで外因性エストロゲン感受性が高まり、高感度試験法としての可能性が示唆された。今後、エストロゲン作用が既知の幾種類かの化学物質で曝露試験を行ってその有効性を検証する。
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