研究概要 |
近年,多種類の抗菌・防臭製品が開発されているが,用途,消臭速度,持続性など改良の余地もある.本研究では,衣料に適した消臭機能を持つ染色布の調製と,その消臭機構について検討を行った.また,再利用の道がなく,焼却処分されている羽毛,絹,羊毛などの廃棄物についても,この消臭機能化法を適用し,消臭・抗菌材料として再生を図ることを検討した. 銅塩と数種の含銅直接染料(C.I.Direct Black 112他),または酸性媒染染料(C.I.Acid Mordant Yellow 3他)で綿布または羊毛布と羽毛を先媒染,染色,後媒染し(重ね媒染),臭い物質として選んだエチルメルカブタンに対する消臭効果を調べた.どの染色布も銅による媒染を重ねることにより,消臭効果は大きくなった.重ね媒染綿布は含銅量が重ね媒染羊毛布の10%にもかかわらず高い消臭効果を示した.銅が繊維表面に吸着しているためであると考えられる.形態の異なる綿メリヤスと脱脂綿について,重ね媒染した場合の含銅量はほぼ同じであったが,消臭能はメリヤスが大きかった.メリヤスでは先媒染で結合した銅が多く,脱脂綿では染色と後媒染で結合した銅が多く,消臭効果は必ずしも含銅量とは相関せず,銅の結合様式の違いにより異なることがわかった.一方,羽毛については,表面積が市販活性炭の1/1000にもかかわらず,重ね媒染すると消臭速度は活性炭と同程度で,半減時間は5〜10分であった.これは銅の羽毛の細孔への高い吸着によるものと考えられる.インバースガスクロマトグラフ(IGC)法を用いた消臭機構の解明に先立ち,IGC法で重ね媒染綿布の吸湿性を検討した.吸着等温線は低相対圧領域で逆シグモイド型を示し,低温度では未処理布に比べて媒染布の吸着量がわずかに増加した.これらより,今回調製した重ね媒染布の消臭機能は十分期待できることがわかった.
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