研究概要 |
牛肉を加熱する際に調味料のうち砂糖を先に加えておくと肉が軟らかいといわれ、タンパク質性食品を調味料によって一層軟らかくする方法を探ろうとした。試料の牛もも肉を筋繊維に直角に0.5cm厚さに切断した薄切り肉を、75,80,85℃の水と20%砂糖溶液の中で、5,10,15,20分間加熱し、重量、水分、タンパク質(コラーゲン)の溶出率を測定し、テクスチュロメーターにより硬さを測定した。また、光学顕微鏡により加熱時間・加熱温度による組織の変化を観察し、写真撮影を行い比較検討を行った。 加熱中の重量は、水中加熱では時間を長くするにつれて、また温度を高くするにつれて減少率が上昇した。水分も同様の傾向を示した。しかし、20%砂糖液中で加熱すると、加熱条件が同じでも、水中加熱肉よりは肉の重量が大きく、水分はかなり少ないことが示された。これは加熱によって肉タンパク質の保水性が減少して肉から水分が浸出して、そこに砂糖液が侵入していることを示している。肉の硬さの値は、75℃の場合に5〜20分間の加熱で、水中加熱よりも砂糖液加熱の方が値が低い。80℃では、5、10分間では砂糖液中の方が値は低いが、15、20分間と加熱時間を長くすると、水中加熱よりも値が高くなった。85℃では、砂糖液中で加熱した方が水中加熱よりも硬くなっていた。水中加熱よりも砂糖液中加熱の方が軟らかいのは75℃加熱、80℃の5,10分間加熱で低温、短時間のものであった。このような変化を組織学的に見ると、75℃と85℃の加熱の変化は小さく、80℃に温度を設定しておくと、筋線維に大きな亀裂が生じ、しかもそれは固まって起こっており、80℃以下では筋線維タンパク質が変性をしても結合組織の一部は変性せずに残り、80℃にしたときに収縮するので筋線維が大きく裂けるのであろうと推定した。砂糖を加えて軟らかいのは加熱温度が低いときであるといえる。
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