研究概要 |
食物依存性運動誘発アナフィラキシーのメカニズム解明のため,卵白オボアルブミン(OVA)感作BALB/cマウスにOVAを経口投与後,運動負荷すると,運動負荷のみの場合より強いアナフィラキシー症状が観察され,小腸上皮組織の障害も観察された。さらに,卵白リゾチーム(Ly)感作B10.Aマウスにアレルゲンを投与・強制運動を負荷すると,運動パフォーマンスが著しく低下した。小腸粘膜上皮組織の著しい損傷が観察され,Lyが肝臓から検出された。これらの両実験系の結果を比較すると,BALB/c-OVA系よりB10.A-Lyの方がモデル動物系として優れていると判断した。 アナフィラキシー症状の判定方法として,マウスの症状の肉眼的観察による判定方法や血圧あるいは体温測定などがある。より客観的な判定方法を確立するために,感作マウスにLyの経口投与・運動負荷後のlocomotionの測定と回転式自発運動量測地装置で自発運動量を測定した。Ly投与・運動負荷によって感作マウスの行動量および自発運動量は有意に低下した。これらの結果がよく一致したことから,自発運動量の測定はマウスのアナフィラキシー症状の一つの判定方法として有益であることを確認した。更に,Lyを眼窩静脈から投与し直腸温および自発運動量の測定からアナフィラキシー症状を判定したところ,アナフィラキシー・スコアと直腸温あるいは自発運動量とは有意に相関した。 ペクチンあるいは乳酸飲料の長期投与によるアナフィラキシー惹起抑制効果を検討した。ペクチンあるいは乳酸飲料を自由摂取としたLy感作マウスにLy経口投与・運動負荷後すると自発運動量は,対象とした水摂取群の感作マウスの著しく低下した自発運動量に比べて,自発運動量を有意に抑制した。これらの結果から,ペクチンあるいは乳酸飲料の長期間摂取はアナフィラキシー症状の惹起を顕著に抑制した。
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