研究概要 |
小麦粉生地におけるチロシン残基の関与する架橋構造として,チロシン残基とシステイン残基によるもの,チロシン残基とチロシン残基によるもの,チロシン残基とフェルラ酸のカップリングによるもの等が考えられる.ここでは小麦粉生地におけるジチロシンの生成および生地物性に及ぼす影響について検討を行った.過酸化水素,ペルオキシダーゼ,ペルオキシダーゼ一過酸化水素を添加した場合の影響についても検討し,以下の結果を得た. 1 パン生地(小麦粉:250,食塩:5,イースト:5,砂糖:12.5,水:170)より調製したグルテンの酸加水分解物中にジチロシンの存在をHPLCおよびLC-MSにより推定した.過酸化水素,ペルオキシダーゼ一過酸化水素の添加によりジチロシンの生成量は増加した. 2 ドウグラフでパン生地の混ねつ特性の解析を行った結果,過酸化水素,ペルオキシダーゼ一過酸化水素の添加によりミキシングカーブは変化しており,ピーク時間,生地形成時間および軟化時間は延長することが明らかになった.ペルオキシダーゼの添加によっては顕著な変化は観察されなかった. 3 過酸化水素,ペルオキシダーゼ添加はトータルガス発生量および内蔵ガス量には影響を与えないことが明らかとなった.パンの体積はペルオキシダーゼ過酸化水素を添加した場合は,コントロールに比べて小さくなった.パン生地中でのジチロシンの生成と生地物性の関係についてついては,さらに検討が必要である.
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