研究概要 |
本研究は,国内の多文化化・価値の多様化の進展に伴う教育の課題に応えるために,多文化主義(Multiculturalism)を前提とする教育のあり方を考える基礎的研究である。それゆえ,多文化教育の先進国であるアメリカ合衆国とイギリスにおける多文化教育論と「多様性」・「公共性」の両者に尊重した教育実践(カリキュラムや教科書等の教材を含む)の比較検討を通して,日本における多文化共生社会の教育のあり方について考察を行った。本年度は研究の最終年度にあたり,資料収集の継続・資料の更なる分析及び検討を行い,最終的な研究報告をまとめた。具体的には,本年度の研究として,主に以下の四つの研究活動を行った。 (1)アメリカ各州・イギリスのナショナル・カリキュラムの分析 収集したアメリカのいくつかの州のフレームワーク,イギリスのナショナル・カリキュラムを追跡調査し,その中に多文化共生社会における社会系・言語系教育についてどのような内容構成で学習内容・学習形態・学習方法が位置づけられているか,最終的な分析を行った。 (2)アメリカ・イギリスの多文化・多言語教育の社会系・言語系教科書・教材・学習指導案・実践の分析 平成14・15年度の調査で収集した教科書・教材及び学習指導案およびそれに基づくビデオに収めてきた授業実践を取り上げ,それらの中で多文化・多言語教育に関する内容,それにみあった学習形態・方法がどのように位置づけられ,構成されているか分析した。特に多文化共生社会における社会的意思決定と市民的行為,社会参加を育成するための学習内容・方法・活動,および社会言語学に基づく言語の使用における意味生成過程や自己内の多様な言語体系の選択を可能にする学習内容・方法・活動を中心に分析した。 (3)研究成果の公表 以上の研究成果を,日本社会科教育学会第54回全国研究大会国際シンポジウム,日本公民教育学会第15回全国研究大会シンポジウム,国際理解教育学会第14回研究大会研究発表において研究成果を報告した。 (4)研究成果報告書の作成 平成14〜16年度の諸専門学会における研究発表を基に,多文化共生社会における社会系・言語系教育の意義や可能性について考察するとともに,日本における多文化・多言語教育の具体的あり方と今後の課題を提出した。最終的な研究成果をまとめ,報告書として作成した。
|