研究概要 |
重度脳障害児・者(重障児)のなかでも大島の分類の「1」に該当する最も重篤な障害を有する者には,姿勢・運動面に厳しい制限をもつ者が少なくない.教育活動を実際に展開する上で,最初に問題となるのは教育活動時の課題とそれに適切なポジショニングである.現状では,担任教師の経験に依存した対応がなされているが,誰もが利用可能な客観的な評価尺度が必要である.昨年は主として,心拍指標による評価尺度の作成を行った.本年度は、研究計画の最終年にあたり,評価尺度の教育実践への適用について,2事例で検討を行った.なお,本事例は昨年からの継続児であった. 評価尺度として用いたのは,平均HR(HR水準),一過性反応(減速反応,加速反応,無反応)の2種類であり,RSAの即時フィードバックは実現できなかった. A児は高等部3年の男児で,強度四肢麻痺(痙直型)があり,有用な随意的な運動はほとんど不能であった.A児には,課顕によって車椅子座位および背臥位,側臥位での働きかけを行った.静的な課題(読み聞かせ,ペープサート劇)では心拍反応をモニタし,適切な姿勢を指示した.その結果,比較的良好な状態で課題を継続できる時間は延長した.B児は小学部6年の女児で,四肢麻痺はあるが,上肢の運動はリーチングが一部可能であった.A児に対しては,指導当初は主として車椅子座位で働きかけた.しかし,HR測定の結果および作業療法士との協議に基づき,側臥位姿勢で課題を実施することとした.その結果,2学期半ばには,上肢の運動コントロール(目と手の協応)に顕著な改善が見られ,本尺度の有用性が確認された. 今後,酸素飽和度等のその他の生理指標との併用により,評価尺度の精度を高める必要がある.
|