研究概要 |
近年,日系人を含む外国人の滞日が増加し,これらの外国人に同伴される外国人生徒(以下,生徒)も増加し,生徒の高校進学問題が深刻な状況を呈している。日本人生徒の高校進学率は97%に達しているが,生徒のそれは,53%程度に留まっている。従って,行政的な対応の改善は言うに及ばず,教育現場での何らかの入試対応策が必要である。 そこで,本研究では,日本語力の弱い生徒が高校入試に備え,教科ごとにどのような日本語の表現・語彙や設問の特徴などをとらえていればよいかを考察した。具体的には『2003年受験用 全国高校入試問題 正解と分析』(学研,2002年4月発行)の英語,理科,数学の全設問文を対象として分析を行った。 英語では,英語の問題本文(英語)は理解できるが,その設問文(日本語)が理解できない,つまり「解答」そのものではなく「解答方法」がわからず記述できない生徒のために必要な語彙・表現を抽出した。その抽出方法は,手作業による質的分析と日本語形態素解析ソフト「茶筅」による量的分析によった。理科及び数学では,複雑かつ膨大な分析を要したので,コンピュターによる処理を行った。因子分析し,カテゴリ分けされた単語データをニューラルネットワーク(人間の持つ優れた情報処理能力を人工的に実現させる技術,脳を工学的に模擬したアルゴリズム)の中のアルゴリズムのひとつである砂時計型ニューラルネットワーク(入力情報と出力情報が全く同じアルゴリズム)に入力し,カテゴリごとの相関関係をみた。すると,設問文と解答との相互関係を導き出すことができた。これらの圧縮情報に先の因子分析の結果を学習させ,設問文の特徴を導き出した。この両教科については,典型的な入試問題及び入試でよく使われる語彙・表現を得ることができた。そこで,この両教科について実際の入試対策として,どのように活用していくかという検討を,今後の研究課題としたい。
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