研究概要 |
母数に順序制約があるとき,ブートストラップ法に基づく推定量について調べ,次のような知見を得た. (1)母数の最尤推定量は不偏推定量とはならない.しかもある傾向性を示す.例えば,単順序の場合,真の母数との間にmajorizitionのような関係が認められる.最尤推定量は,幾何的には,ある点から母数の制約を満たす集合である凸多面錐とその双対な錐への射影の間の関係と関連づけられるが,これらのことから,ブートストラップ法に基づく推定量は偏りがより著しくなることがわかった.またブートストラップ法において,再抽出する際の標本サイズを大きくすることで,バイアスを小さくできるのではないかと当初考えたが,むやみに大きくする方法は,母数空間の制約境界で極めて不安定なものとなることも判明した. (2)母数に順序制約がある場合,AICのいわゆるバイアス補正項は漸近的にも未知母数に依存するので,なんらかの形で推定する必要がある.バイアス項を生ずる統計量を,ブートストラップ法により直接構成する方法では偏りを生じる.これに対して,最尤推定値のうち,異なる値の個数で推定する方法を考えた.この方法はKikuchi, Yanagawa and Nishiyama(1993)で用いられた,AICに基づく方法とも関連づけられる.この方法ではバイアス補正項の不偏な推定量をデータから構成できるが,残念ながら分散が大きく不安定である.そのため,同推定量のブートストラップ法による構成法を考えた.しかし,その後,文献調査と熟慮考察の結果,このようなブートストラップ法でもやはり,バイアスが生じるであろうという結論に至った,なお,この問題に対するひとつの改善策として,標本数nの重複対数loglognのオーダーでの修正法の可能性があることが文献調査等により示唆された. 上述のように,当初の考えた理論に若干問題があることが判明したため、予定に遅滞を生じた.本研究の研究期間は終了したが,できるだけ早急に論文にまとめたい.
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