研究概要 |
本研究の遂行にあたり,まず,分散共有メモリ(DSM)型並列計算機での通信について,マルチスレッド化について,FPGAを前提にハードウェア化についての3つの方向からの検討を行った.DSMでは,ハードウェアにより投機的に通信を行うことで通信コストを軽減する方式を考え,相互結合網を含めたシステムの挙動の解析を行った.マルチスレッド化に関しては,主にプログラムの挙動を第三者的に把握するためのプロファイリング技術の開発を中心に行った.これによりプログラムの挙動とそれを把握する手法について基本的な知見を得ることができた. 上記検討の結果,本研究の成果の中核となる「メタレベル計算原理」の創出に至った.これはプロファイリングなどプログラムの挙動を第三者的に観測する技術を統合し,ハードウェア・ソフトウェア両面にわたる総合的な最適化技術に昇華しようとするものである.この核概念を基にして,ノードでのプロセス単位での挙動理解,そしてシステム全体に亘る挙動の理解,について並行して検討した. またさらに,並列処理系における自律的な動作に関する検討を深めるためにマルチエージェントシステムを取り上げた.ここでは家電やCAD技術への応用を例題とし,それぞれに自律動作するエージェントの集合により目的の機能を果たすための知見が得られた.また,大規模並列の問題として耐故障性機能についても検討を行った. 相互結合網の挙動を理解し,適用動作に反映させるメカニズムとして,ルーティング方式Cross-Lineを考案した.結合網の各部の状況を情報として流通させる事で適応動作を得ようとするものである.Corss-Lineは簡単な動作原理ながら,こうした新しいクラスの相互結合方式の開発を意図している.
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