研究概要 |
情報通信の高性能化に伴って,高性能化とは逆説的に,無ひずみデータ圧縮への要求が高度化している.そのような要求を背景に,データを記述する文法を導出し,データそのものの圧縮にかえて文法を圧縮する「文法法」が注目されている.本研究では,導出した文法の最小性と最終的な符号化を経た後の符号語の最適性との関連を中心に,文法の実際の符号化までを含めて,言語モデルに基づく圧縮法の総合的な解析を行った. まず,導出した文法のカノニカル構造に適した符号化の検討を行った.既に提案済みの再帰時間符号化法に加え,多重集合に対するインバーション法について検討し,ほぼ同等の性能を持つものであることを確認した.なお,前者の再帰時間符号化法についてはISIT2003で発表を行った.続いて,最適な文法を求める問題に対する近似アルゴリズムの立場からの評価と圧縮法の冗長度との関連について調査を行った.近似アルゴリズムの近似率と冗長度の直接的な関連性については今後の課題である.文法法を中心として最近の無ひずみ圧縮法の潮流については,電子情報通信学会2003年通信ソサイエティ大会でチュートリアル講演を行った. 関連した諸研究として,無ひずみデータにおけるデータ埋め込みと濃淡画像に対する情報埋め込みの性能向上にも実績を残した.まず,無ひずみデータ圧縮の漸近的最良性を保ったデータ埋め込みの可能性を明らかにし,埋め込み許容量と圧縮限界との関係を明らかにした.さらに,自己埋め込みによる再帰時間符号化法の圧縮改善法を確立した.
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