研究概要 |
業務支援ソフトウェアを開発するためには,対象業務を適切にモデル化する必要がある。このモデルが誤っていると,開発されたソフトウェアは「使いものにならない」ということで捨てられてしまう.小規模開発では,このモデルは開発者の頭の中にしか存在しないが,中規模以上の開発では,このモデルを明示し,現在の業務担当者や,完成後のシステムの利用者の理解を得ることが必須である. 代表的な業務モデリングにIDEF0技法がある.IDEF0ダイアグラムは,記法が簡単で,初心者でも容易にその内容を理解することができる.しかし,適切なダイアグラムを書くことはそれほど容易ではない.特に複数の役割を持つ人々が協調して業務を遂行している場合,複数の視点が混在したあいまいなダイアグラムになりやすい. 本研究では,ユースケース図,状態遷移図,ペトリネット,ERモデル,IDEF0ダイアグラムなど,多様なダイアグラムを用いて,業務を複数の視点から分析する手法を確立した.具体的には,1)ユーザインタフェースからIDEF0ダイアグラムを生成,2)IDEF0ダイアグラムからERモデルを生成,3)ペトリネットからIDEF0ダイアグラムを生成,4)ユースケース図と状態遷移図からERモデルを生成,5)ユースケース図とペトリネットからERモデルを生成,6)リーンメソッドに基づく業務分析支援,などの手法を提案した.また,1)については支援ツールのプロトタイプを開発した. 本研究の今後の課題は,確立した手法を支援するツールを開発することである.多様なダイアグラムと手法を一人の分析者が使いこなすことは容易ではない.そこでそれらを統合的に支援するツールの開発が望まれる.
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