研究概要 |
絡み目の多項式不変量を決定する問題及びその最高次数を決定する問題の計算量を,絡み目を制限しない場合,適当な制限を行った場合などで詳細な分析を行い,古典的な数え上げの計算量クラスとの関連及び量子計算量クラスとの関連を解明することが本研究の目的であった. 2-bridge絡み目,closed 3-braid絡み目に対して,従来より高速にジョーンズ多項式を計算するアルゴリズム,つまり,これらの絡み目型に対して,それらの標準的なダイアグラムに対応するTaitグラフからそれらのジョーンズ多項式を0(n^2 logn)時間で決定するアルゴリズムを開発した.Montesinos絡み目に対しては,その標準的ダイアグラムに対応する整数列のリストから線形回数の多項式演算で,そのジョーンズ多項式を決定するアルゴリズムを提案した. 当初の研究計画に含まれていなかったが,絡み目の自明性判定問題の計算量解析を行った.この問題に関しては,既にNPに属することが証明され,NP∩co-NPに属すると予想されていた.本研究では自明性判定問題の補問題である非自明性判定問題に対する対話型証明系を構成し,この問題がIP(2)に含まれること,つまり,自明性判定問題がNP∩co-AMに含まれることを示した.このことから,自明性判定問題がNP-完全ならば,多項式時間階層が第2レベルまで崩壊することになり,自明性判定問題はNP-完全ではないと予想される.また,ブレイド群における共役問題がPSPACEに属することを証明した.
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