研究概要 |
生物進化を模したアルゴリズムに基づく進化的計算の分野は,最近めざましい成果をあげつつある.しかし,実用に成功してきた進化的計算のアルゴリズムの多くは,固定的な適応度関数を用いる遺伝的アルゴリズムに代表されるような,いわば,静的な適応度地形における山登りに相当するものであった.しかし,生物の進化はそのように単純なものではなく,集団を構成する各個体の適応度は,同集団中の個体,あるいは異集団の個体との相互作用に依存し,さらに,個体のレベルにおいても,形質間の動的な相互作用の影響は無視できない場合が多いと考えられる.そこで,このような(広義の)「共進化」現象の解明,及び応用を目的として,次の3つの互いに依存し合うアプローチを並行して進めた.まず,第一に,様々な現象において存在する共進化のメカニズムを概念レベルで統一的に理解するために,共進化に関わる3つの最小モデルの作成,及び挙動の観察,解析を行い,創発的計算パラダイムに基づいた方法論で共進化ダイナミクスを検討した.第二に,共進化のフレームワークを自律ロボットの設計手法として応用するための知見を得るために,特に,ロボットの構造と行動の共進化,及びロボット行動における捕食者と被食者の共進化に焦点をあてて検討した.第三に,共進化を志向した群ロボットにおける社会的知能の創発のメカニズムを検討するために,群知能としての計算知能の創発,ロボットにおける感情,認知の多様性と適応性というテーマに関して検討した.このようにして,共進化現象の統一的な理解のための数学的な知見を得るとともに,共進化のメカニズムを多面的に応用して自律的ロボットを設計するための原理,及び,方法論に関する知見を得ることができた。
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